三相交流 — 相電圧と線間電圧

Vr|V_r| (相電圧)
200 V
Vs|V_s| (相電圧)
200 V
Vt|V_t| (相電圧)
200 V
Vrs|V_{rs}| (線間電圧)
0 V
Vst|V_{st}| (線間電圧)
0 V
Vtr|V_{tr}| (線間電圧)
0 V
V
°
V
°
V
°

パラメータを動かしてみよう

1 平衡三相交流の基本

まずデフォルトの状態(R=0°、S=−120°、T=+120°、振幅すべて 200V)を観察してください。これは 平衡三相と呼ばれる状態で、3つの相電圧が振幅も等しく、位相が互いにちょうど 120° ずつずれています。

左のフェーザー図上で R/S/T の3本の矢印が、原点から正三角形の頂点を指すように放射状に並んでいることを確認してください。波形グラフでは3つの正弦波が「ちょうど 1/3 周期ずつ遅れて」並んで揺れている様子が見えます。

2 線間電圧 = 相電圧の差

フェーザー図は 2つ並んでいます。役割が違うので順に見てください。

左の図には R/S/T の相電圧(濃色の太矢印)に加えて、相電圧の先端どうしを結ぶ線間電圧 Vrs,Vst,VtrV_{rs}, V_{st}, V_{tr}(橙・紫・青緑の細い矢印)が描かれています。これが Vrs=VrVsV_{rs} = V_r - V_s幾何的な構成を示す図で、教科書でよく見るスタイルです。「S 相の先端から R 相の先端へ向かう」ベクトルが、ちょうど VrVsV_r - V_s に一致します。

💡 ただしベクトルは本来「原点起点で長さと向きを持つ量」です。「相電圧の先端どうしを結ぶ」という描き方は構成手順を示しているだけ。右の図は同じ線間電圧を原点を起点とした矢印として描き直したもので、こちらが本来のベクトル表現です。左の細い矢印と右の太い矢印は、長さも向きもまったく同じになっていることを確認してください。

下段の波形グラフを見ると、線間電圧 vrs(t)=vr(t)vs(t)v_{rs}(t) = v_r(t) - v_s(t) が、相電圧の差として時間領域でも確認できます。

💡 線間電圧の和は常にゼロ: Vrs+Vst+Vtr=(VrVs)+(VsVt)+(VtVr)=0V_{rs} + V_{st} + V_{tr} = (V_r - V_s) + (V_s - V_t) + (V_t - V_r) = 0(恒等式 / KVL)。これは 相電圧が不平衡でも成立する三相3線式の基本性質です。実機で R 相を 100V に下げてみても、3つの線間電圧の波形を縦に足すと 0 になることを確認できます(下段グラフの3本を目で足し算)。後で 対称座標法を学ぶときの「線間電圧では零相成分が常にゼロ」という事実はここから来ています。

3 3\sqrt{3}倍の関係と 30° の進み

平衡三相のときに数値ボックスを見てください。線間電圧の振幅は相電圧の約 1.732 倍 (= 3\sqrt{3})になっているはずです。例: 相電圧 200V → 線間電圧 約 346V。

フェーザー図で確認すると、線間電圧の矢印は相電圧の矢印より明らかに長く、向きも 30° だけ進んだ位置にあります。三相交流の最も重要な公式 Vline=3Vphase|V_{\mathrm{line}}| = \sqrt{3}\,|V_{\mathrm{phase}}| が、フェーザー図上の正三角形と二等辺三角形の幾何学的な関係から自然に導かれることを実感してください。

4 不平衡を作ってみる

振幅や位相のスライダーを動かして、わざと 不平衡な三相を作ってみてください。例えば:

  • 振幅不平衡: R 相だけ 100V に下げる
    Vrs|V_{rs}|Vtr|V_{tr}| の長さが変わり、3つの線間電圧が不揃いになる
  • 位相不平衡: S 相の位相を −90° に変える(振幅は 200V のまま)
    → 相電圧の大きさはすべて同じでも、位相が不平衡になるだけで線間電圧の大きさが不平衡になる
  • 1相欠相(片相停電): T 相の振幅を 0V に
    Vst=VtV_{st} = -V_tVtr|V_{tr}| が同じ長さの線間電圧として残り、Vrs|V_{rs}| はそのまま

実際の電力系統で発生する不平衡(電圧降下や欠相事故)が、線間電圧にどう影響するかをフェーザー図で直感的に把握できます。